地域整備関連


調査名

「2005年日本国際博覧会に関する提言」


概要

調査名 「2005年日本国際博覧会に関する提言」
発表日 平成11年5月17日
担 当
2005年委員会
 
委員長 福田完爾(福田刃物工業会長)
副委員長 杉山正裕(岐阜商工信用組合理事長)
 



提言要旨

  • 2005年日本国際博覧会の成果を"無形の資産"として地域に残すことを目指す。
  • 基本構想に「広域パビリオン」構想を掲げ東海地域全域で万博を開催、地域の活性化を目指す。
  • 具体的には、産業分野では、伝統技術と先端技術の融合、地場産業の新たな飛躍を目指す。
  • 環境分野では、「環境大使館」の設置、環境をテーマにした交流の促進を目指す。
  • 生活分野では、福祉・医療にITSを先進的に導入、人に優しい街の形成を目指す



提言

提言のねらい


2005年日本国際博覧会の成果を"無形の資産"として地域に残すことを目指す。

 2005年に開催される日本国際博覧会(万博)については、その開催効果が大いに期待される反面、効果が得られるエリアが限定される、効果があったとしてもそれが一過性のものに終わるなどの懸念もある。

 岐阜県を拠点に経済活動を展開する我々にとっては、「万博の効果をいかにして岐阜県に波及させるか」、言い換えると「万博の有形・無形の"資産"をいかにして地域に残すか」が重要な課題である。

 "有形の資産"としては、メイン会場の整備および交通網をはじめとする周辺整備があげられるが、それらについては既に各方面で検討されており、一部事業化されているものもある。当委員会としても、これらの計画は住民生活の向上や地域経済が発展するためには重要なプロジェクトと認識しており、今後とも着実に推進されることを期待する。特に、東海環状自動車道の整備については、2005年に向けて滞りなく進められることを切望する。

 "無形の資産"としては、住民と来訪者の交流、内外の経済人や技術者の交流など人的交流の創出、環境に対する意識の向上、地域イメージの向上などが考えられる。これら"無形の資産"は"有形の資産"と異なりその成果が目に見えないため実感しにくいが、効果の永続性や広域性という点から見れば有形の資産より優位にある。

 従って、万博に向けての取り組み、万博の成果として"無形の資産"をいかにして地域に残すかをテーマに、それを実現するための方策を提言として取りまとめた。



提言
1.「広域パビリオン」構想
2.「地場産業グローバルネットワーク」構想
3.「環境大使館」構想
4.「ITS生活モデル都市」構想

■基本構想


「広域パビリオン」構想
〜東海地域全域で万博を開催、地域の活性化を目指す〜

 万博では開催期間中に内外から2500万人の来訪が見込まれている。それらの人々に対して東海地域を強く印象づけることによって、地域の産業の発展はもとより環境面、生活面などにも相当の効果が期待できる。すなわち、当地域の活性化にとって万博の開催は千載一遇のチャンスであるといえる。

 しかし、近傍の地で世界的なイベントが開催されても、そのイベントと一体化するための取り組みを怠ると波及効果を期待できないことは、最近の例では長野冬季オリンピックが示す通りである。

 従って、万博開催を契機に地域の活性化を目指す取り組みの一つとして「広域パビリオン」構想を提案する。

 「広域パビリオン」構想とは、万博の展示施設であるパビリオンの概念を会場内だけでなく、会場外の地域にまで広げるという考え方である。すなわち、同構想は会場外に新たにパビリオンを建設するというものではなく、会場内のパビリオンで展示される「空間」と近傍の「地域(産業・自然・生活など)」を一つのパビリオンと捉え、それを全世界にアピールするものである。

 同構想の推進によって、万博の成果としての"無形の資産"が、メイン会場およびその周辺の限られた地域だけでなく、広範囲にわたって残されることが期待できる。

以降では、本県を中心として東海地域における「広域パビリオン」構想の実現に向けての具体的方策を、『産業』、『環境』、『生活』の各分野からアプローチし提言として取りまとめた。







■具体化構想
「広域パビリオン」構想 1(産業分野)


「地場産業グローバルネットワーク」構想
〜伝統技術と先端技術の融合、地場産業の新たな飛躍を目指す〜

 当委員会が会員企業を対象に実施したアンケート調査(平成10年8月実施)では、多くの企業が岐阜県産業が発展していくうえで重要なこと、また、万博を機に岐阜県が世界にPRすべきこととして『地場産業・伝統産業』をあげている。

 その一方で、県産業が発展していくうえで心配なことは、『産業の空洞化』としている。言い換えると、会員企業は地場産業・伝統産業の重要性は認識しているものの、現状のままでは国際競争力に懸念を持っている傾向にある。

 また、今後重要な国際交流としては『海外との技術・販売提携』があげられており、地元企業においては万博を機に来訪者との新たな交流を求めている企業が多く存在する。

 従って、万博開催を契機に県経済を発展させるには、地場産業の新たな飛躍が必要であり、その方策として「地場産業グローバルネットワーク」構想を産学官が一体となって推進することを提案する。

《地場産業グローバルネットワーク構想の内容》
 「地場産業グローバルネットワーク」構想の内容は二つである。第一は、会場内のパビリオンの「仮想体験空間」と、地場産業を擁する地域のネットワークの構築である。

 会場内のパビリオンでは、バーチャル・リアリティー技術を活用して、「岐阜のアパレル」「関の刃物」「美濃の和紙」「東濃の陶磁器」「飛騨の木工」などの地場産業の製品づくりを仮想体験できる空間を演出する。

 来訪者は、そこで例えば仮想陶芸などを体験することが可能であり、仮想体験で制作された作品のデータは、情報通信技術の活用により、その産業を擁する地域の生産現場に電送できる。

 地場産業を擁する地域では、生産現場(地元企業)で来訪者のニーズに応じ、仮想体験で得たデータをもとに実際に製造することが可能である。また、地域内では、仮想体験した来訪者が実体験できる工房が準備されているほか、「テクニカルビジット」(企業視察)を受け入れることもできる。

 第二は、会場内パビリオンにおける展示内容および、当地域が世界に誇る伝統技術、先進技術、観光、文化などの地域資源を題材にした交流の支援である。
 万博開催を契機に地域における交流を活性化させるための手段としては、地域資源情報および来訪者情報の検索を可能とするデータベースの構築が有効である。

 同データベースに地域情報を登録、万博関連のホームページなどを通して広く紹介し、海外からも利用できるようにすれば、来訪者は会場内パビリオンの展示内容はもとより、当地域で活躍している人材(名匠、技術者、研究者、経済人)情報や企業の保有技術に関する情報、さらには観光地情報や宿泊施設情報まで得ることができる。また、来訪者のプロフィールや滞在期間などの情報も登録することにより、当地域の人々も来訪者の情報を得ることが可能となり、国境、業種、研究分野などの領域を超えた人々が、会場内パビリオンおよび当地域を舞台に自由に交流することができる。

《地場産業グローバルネットワーク構想の効果》
 同構想の最大の効果は、その取り組みが地場産業の持つ伝統技術と先端技術の融合の契機となることである。

 同構想の内容の一つである、バーチャル・リアリティー技術や最先端の情報通信技術を用いた地場産業の演出については、そのような取り組みの中に地場産業高度化のヒントが見いだされ、閉会後はその一部が実際のビジネスに応用されることが期待できる。

 また、人材情報に関するデータベースの活用により、これまで出合う機会の少なかった内外の名匠、技術者、研究者、経済人が万博を機に出会い、交流することによって、伝統技術と先端技術の融合や伝統技術の異分野での活用法などに関する新たなアイデアが生み出される可能性がある。

 さらに、産業情報に関するデータベースの活用によって、観光を含めた地域産業が万博を機に世界から認知されることも期待できる。





「広域パビリオン」構想 2(環境分野)


「環境大使館」構想
〜「環境大使館」の設置、環境をテーマにした交流の促進を目指す〜

 アンケート調査では、自由記入欄に記述されたもののほとんどが環境保全に関する内容であり、万博で取り組むべき最重要課題は「環境問題」との認識が高いことが明らかになっている。

 環境保全は国境を越え地球的規模で考える必要があり、世界の国々の英知を結集して解決すべき課題である。

 万博には160カ国ともいわれる国々が出展する。これらの国々はそれぞれ、異なった地理的条件、風土、文化を持つ。従って、環境保全についても固有の考え方があると考える。たとえば、国土の多くを山林で占められている国、河川や湖沼を多く持っている国、四方を海で囲まれている国ではそれぞれ、歴史のなかで培われてきた環境保全に関する独自のノウハウを有しているはずである。

 万博の開催を契機に、展示国の協力を得てこれらの国々の多様な考え方やノウハウを、岐阜県ひいては東海地域の環境保全に生かすことが望ましい。

 その方法の一つとして、各国のパビリオンの一角に環境保全について意見交換する場である「環境大使館」を設置し(各国の大使館を一カ所に集約させた「総合環境大使館」を建設してもよい)、それを核に環境をテーマにした交流促進を目指す「環境大使館」構想を提案する。

大使館は、原則として展示国から派遣された「環境大使」と大使を支えるスタッフで構成される。大使は政府の高官である必要はなく、環境行政の実務者や環境保全を目的とするNPO(非営利法人)などに携わる一般の市民が適任である。

《環境大使館の機能》
大使館の機能は三つある。第一は、万博の開催コンセプトのアピール機能である。大使館の設置そのものが、開催コンセプトを多くの市民に、より直接的に伝えることを可能とする。また、館内で自国の誇ることができる自然景観や生態系、文化遺産などを最新の音声・映像・通信技術を駆使して紹介することにより、開催コンセプトの重要性を来訪者に訴えることができる。

第二は、環境教育の機能である。大使は、東海地域の小・中・高等学校などで講演し、自国の環境保全状況、現在の課題、環境政策の成功例などを紹介することにより、青少年に地球環境保全の重要性を認識させるだけでなく、教育者に環境教育の進め方や方法などを授けることができる。

 第三は、環境保全状況の評価機能である。大使は自国の地理的条件、風土、文化などを考慮したうえで、「山岳」、「河川」、「海岸」、動植物などの「生態系」(「シデコブシ」、「サンショウウオ」など)のグループである"環境ルート"のうち、いずれかに所属して東海地域の各地を視察する。たとえば、国土の多くを山林で占められている国の大使は「山岳」、河川や湖沼を多く持っている国の大使は「河川」の"環境ルート"に属し、実際に東海地域の山岳地帯や河川流域を視察する。大使は、わが国の環境行政の実務者や一般の市民と意見交換したうえで、自国の環境保全状況と比較して地域の環境保全状況を評価するとともに、自国の環境政策を参考に改善すべき点をアドバイスする。

《環境大使館構想の効果》
 「環境大使館」構想の効果、すなわち、万博開催による無形の資産としては、三つあげることができる。

 第一は、市民の環境意識の醸成である。開催前には、"環境ルート"の形成や環境大使の任命を通して、開催期間中は、同構想が有する開催コンセプトのアピール機能、環境教育の機能により、来訪者に限らず一般の市民にまで、環境保全の必要性を認識させることが可能となる。

 第二は、環境保全状況の評価機能により得たアドバイスが、環境保全面からみた今後の地域整備の指針となることである。大使が視察した結果やアドバイスを取りまとめたレポートは、今後の当地域の地域整備にとって貴重な資料となる。

第三は、環境保全状況の評価の過程で、大使が視察した"環境ルート"が、万博の閉会以降も環境保全をテーマにした地域連携軸として活用できることである。たとえば、視察した「河川」のルートの地域の住民が相互に交流を始めることにより、新たな連携軸が誕生する可能性がある。また、「河川」のルートの地域と、当ルートを視察した大使の母国の間において環境保全や災害時における支援・協力体制を確立する、あるいは環境保全に関する国際的な会議を共催するなど、連携軸の範囲を国内にとどまらず、海外にまで広げることが可能となる。





「広域パビリオン」構想 3(生活分野)


「ITS生活モデル都市」構想
〜福祉・医療にITSを先進的に導入、人に優しい街の形成を目指す〜

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 国際連合が1996年に発表した将来の人口推計によると、わが国の65歳以上の人口割合は1995年には約14%であったが今後さらに上昇し、21世紀初頭には約20%で世界1位になる。また、2050年には先進地域では約25%、発展途上地域でも約14%になると予測されている。つまり、人口の高齢化はわが国のみならず、全世界が抱える課題であり、今後一層深刻化していくことが予測されている。

 アンケート調査でも、岐阜県産業が発展していく上で心配なこととして「人口問題」が上位にあげられている。

 これらのことから、世界に先駆けて超高齢社会を迎えるわが国において、高齢者が安心して生活できる街づくりを世界に提示することは、万博で環境をテーマに取りあげることと同様に意味がある。
 
なお、岐阜県を含む東海地域は、自動車およびその関連産業や物流産業の集積度も高く、これらの業界では「ITS:Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)」の各分野で蓄積した技術やノウハウがある。さらに各自治体においても、ITSの社会実験に取り組もうとの動きがある。すなわち、当地域にはITS技術の研究・開発について今後先進的な役割を担っていくことが期待されているうえ、同技術の導入の土壌も整いつつある。

 従って、万博に向けてITS技術の活用範囲を福祉や医療分野まで拡大し、先端技術を活用した人に優しい街づくりのあり方を全世界に提示する「ITS生活モデル都市」構想を提案する。

同構想の内容は二つである。第一は、東海地域内から「ITS生活モデル都市」を指定し、万博開催時にモデル都市においてITS技術を福祉・医療面に利用した社会実験を行い、住民生活に同技術が浸透している姿を先進事例として紹介することである。

 第二は、メイン会場内のパビリオンにおいて同技術の先進性や可能性を紹介したうえで、会場内およびその周辺地域においてITS技術を用いて当地域の地理・交通に不案内な来訪者の自由な移動を支援することや、混雑時の移動を円滑化することにより、来訪者が同技術の利便性を実体験できることである。

《モデル都市における活用イメージ》
 まちづくりと一体的にITS技術を導入、福祉や医療など多方面で活用しバリアフリーのまちづくりをソフト面から支援するなど、同技術を先進的に導入する。

たとえば、福祉分野における活用イメージとしては、携帯端末機に目的地を入力することによって、車椅子で通行可能な歩道の経路や身障者用トイレの位置などが画像などで案内される。また、目の不自由な方には音声や振動で経路を案内することができる。

さらに、事故情報や気象情報に基づく危険警告や、緊急時における自宅や救急施設への連絡も可能とし、高齢者、障害者など交通弱者が安心して外出できる環境を支援することが考えられる。

 医療分野での活用イメージとしては、救急車輌内から、脈拍、心電図など患者の容態を示すデータを医療機関に送信、医師からの指示に基づき救急車輌内で処置を行う。また、医療機関においても患者受け入れの準備を的確に行うことを可能とするものである。

《来訪者の移動の円滑化における活用イメージ》
ITS技術は会場周辺道路においては渋滞情報などの提供や、シャトルバスの運行情報の提供など来場者の移動を円滑化するための手段として活用できる。

また、会場内においても、各パビリオンの混雑情報の提供や最適ルートの提案、および、会場やパビリオンのチェックインの自動化など来場者の利便性向上に様々な分野で活用されることが期待できる。

《ITSモデル都市構想の効果》
 本構想の推進には、万博を目標に高齢者などが安心して生活できる環境づくりが先行的に進められる。また、弱者に優しい街としての地域イメージが向上する、福祉に関する住民の意識が向上するといった住民生活に及ぼす効果が期待できる。

さらに、ITSの開発および実用化の先進地域として世界から認知され、東海地域がITS市場において世界をリードしていく上で有利になるといった産業上のメリットも期待できる。

以 上