【提言1】 県内企業は、新分野・新規事業への進出に当たり、まず、自社のコア・スキル(自社の強み、存在理由)を再確認し、コア・スキルをどのように拡大させていくかの戦略を、立案し遂行する必要がある。
《提言の主旨》
県内企業の新分野進出意欲は高い アンケート調査によると、県内企業の新分野・新規事業進出の意欲は、「行う予定」と「検討中」をあわせると約71%であり、全国の企業調査(中小企業庁「経営戦略実態調査」平成6年12月実施、同回答58%)に比べて、高い。 また、新分野進出の理由は、「さらなる業績拡大のため」とする回答が49%と最も多く、この結果から、事業の拡大を目指して、新分野・新規事業へも積極的にチャレンジしていこうという県内企業の意欲を伺える。
新分野進出の阻害要因と進出分野 新分野進出の阻害要因は、「新分野の見極め・採算見込みが困難」の約21%、「ノウハウの不足」の約15%、「人材の不足」の11%と、比較的分散しており、県内企業それぞれで様々な問題点を抱えていることを伺える。過去の新分野進出の実績を見ても、実績が「ある」とした県内企業は約51%と、全国の企業調査(前出、同回答53%)に比べて、若干少ない結果となった。 今後進出したい分野は、約81%の企業で、「現事業の周辺または延長線上にある分野」としており、多くの県内企業は、自社のコア・スキルを活かしうる分野への進出を狙っている。
コア・スキルの確立 コア・スキルとは、「各企業のもつ核となる能力」であり、企業の存在理由・存在価値とも言うことができる。コア・スキルはどんな規模・業種の企業であっても必ず存在する。 従って、県内企業は新分野(現事業の周辺・延長分野)進出の第一歩として、コア・スキルを再確認し、真の強みとすること。そして次に、確認したコア・スキルの応用・発展によって対応できる分野を、進出分野と定めることが重要である。 コア・スキルの確立や進出分野の決定に際しては、経営者だけが考えるのではなく、社員や、顧客・仕入先などの外部関係者までを含めた形でディスカッションすることが望まれる。
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【提言2】 新分野・新規事業への進出に際しては、コア・スキルを応用・発展する形が望ましく、社内の人材を活性化しかつ既存の枠組みを超えた活動を可能とする「社内ベンチャー制度」を取り入れるべきである。
社内ベンチャーへの取り組み意欲は高い アンケート調査によると、県内企業で「社内ベンチャーの募集を実施したことのある」企業は約8%と少ない。しかし、今後導入したいと考える企業は約61%もあり、県内企業は、新分野進出の一つの手法として社内ベンチャーに強い関心を持っていることを伺える。
社内ベンチャー導入の阻害要因 社内ベンチャーの導入に意欲を持つ約61%の企業の内でも、約43%の企業は、「実際には難しい」としており、社内ベンチャー導入に意欲ある企業であっても、多くの阻害要因を抱え、実際の導入には苦心している様子も伺える。 社内ベンチャーの導入または実現が難しいと考える理由は、「アイデアや事業を遂行する人材の不足」とする回答が50%と最も多い。しかし、社内ベンチャーを募集した企業では、84%の企業において社員からの提案がなされている。したがって、多くの県内企業で、チャレンジ精神ある社員が存在し、社内ベンチャー導入により積極的な提案もなされるものと期待できる。
社内ベンチャー導入の必要性 新分野・新規事業へ進出し、国際的な企業間競争を勝ち抜くためには、創造性・独創性が不可欠といわれる。創造性を発揮し新規事業を推進するには、自律的で自由な組織でなければならず、従来の専門化・階層化した組織は、新規事業創出には適さない。新分野進出のためには、既存の枠組みを超えた活動を可能とする組織を意識的に導入する必要があり、その一つとして、社内ベンチャー制度の導入を提案する。
県内企業にとっての社内ベンチャー 社内ベンチャーの導入に際し、県内企業の多くが中堅中小企業であるが故に、大企業にはない多くの有利な点を持っている。 県内の中堅中小企業のトップは、まさにアントレプレナー(起業家)である。社内ベンチャーにとって、最も身近に、最も有効なアドバイザー・支援者が存在している。 トップとの距離が短いため、トップの行動・考え方にも接しやすく、起業家精神の涵養や経営技術の伝達は容易である。また、創業時に最も必要とされる人脈においても、トップの持つ人脈の活用を期待できる。 県内企業の組織は比較的フラットなため、社内の協力を得られやすい。また、ロマンを持ちリスクに挑戦する意欲ある社員に、チャレンジの機会を与えることは、人材の流出防止となり組織の活性化にもつながる。
【提言3】 県内企業にとって、自社のみで社内ベンチャーを企業化させることは、ハードルも高くリスクも大きい。県内の社内ベンチャーが相互に連携しあい、さらには外部の起業家・起業家志願者をも取り込みうる、社内ベンチャー・オープンネットワークの形成を提案する。
社外の人材・企業との連携意欲は高い アンケート調査によると、「優秀な人材は系列を超えてでも登用したい」とする企業は、約76%。また、社外の起業家に対しても約73%の企業が連携するとしており、県内企業は、社外の人材や企業との連携に意欲を示している。しかし一方で、ベンチャー起業家は、起業家同士の人脈を求め、既存の経 済団体・業界団体の活動とは縁遠いという調査結果もある。(週刊ダイヤモン ド第84巻26号)したがって、社外の起業家との接点を、積極的に作りだしていく必要がある。
社内ベンチャー・オープンネットワークの形成 県内企業の社内ベンチャーを成功させ、外部の起業家との接点を探るため、社内ベンチャーによるネットワークの形成と、外部の起業家や起業家志願者を取り込みうる仕組みづくりが必要と考える。この手法として、社内ベンチャー・オープンネットワークの形成を提案する。 ・このネットワークの構成は、独立した社内ベンチャーだけなく、社内のプロジェクトチームのような企業内組織の段階でも良い。新分野進出を目指す人たちを幅広く取り込み、志を同じくした異なるもの同士で、創造性を刺激しあい、知識創造しあうネットワークを形成する。 ・このネットワーク内に県外の起業家や起業家志願者をも積極的に取り込み、個別の社内ベンチャーと結びつける。このネットワークが、起業家精神あふれる自由なものであれば、既存の企業との連携を探るよりも、はるかに迅速に・自律的に連携に至るものと考える。 ・連携の効果は、当然親企業にも波及する。多くの場合、親企業も巻き込んだ形で、新分野進出を模索するであろう。また、外部連携は、既存の組織にも影響を及ぼし、組織全体の創造性も高めることができる。 ・その結果、ごく自然な形で岐阜県に起業家的な風土が形成され、県産業全体の活性化と県内での新産業・新サービスの創出にもつながる。
親企業や行政への期待 ・親企業や行政には、このネットワークの機能を高めるため、次のような支援 を期待したい。 ・このネットワークの存在と活動を、広く外部の起業家や起業家志願者に伝え、参加を呼びかけること。 ・「岐阜県ベンチャー・ビジネス・クラブ」や「岐阜県ベンチャー・サポート・クラブ(仮称・平成9年3月25日発足予定)」とも連携し、ネットワークの環を広げていくこと。 既存産業の成熟化や産業空洞化の懸念の中、あらゆる場で新産業育成の必要性や創造的な事業活動の重要性が叫ばれている。 そのための手法として、「社内ベンチャーの導入」と「ネットワークの形成による外部との連携」を提言した。しかし、その根底となるのは、リスクを厭わず、新分野新事業に果敢に挑戦していこうという経営者の意志である。 官においては既に、新産業創出に向けた様々な支援策が講じられている。今こそ、新産業・新サービスの創出に向けて、われわれ企業人に課せられた役割を認識し、県産業の活性化を果たしていかなければならないと考える。