首都機能移転関連



調査名

「首都機能形成のあり方と新首都の環境・交通施策に関する提言」


概要

提言書 「首都機能形成のあり方と新首都の環境・交通施策に関する提言」
発表日 平成9年11月7日
担 当
首都機能誘致委員会
 
委員長 伊藤喜美
副委員長 尾関尚司、 星野鉄夫、 堤 俊彦、 遠藤宏治、 山本善一郎
 


提言要旨

  • 首都機能の形成のあり方については、「分散型分都」が望ましい
  • 移転先地は、環境施策・交通施策などについて、独自の施策を立案すべき
  • 各施策の一例としては、環境に関しては緑被率を、交通に関しては新交通 システムの活用があげられる


提言イメージ


分散型分都イメージ図 拡大


提言

1.首都機能の形成のあり方 〜集中型から分散型へ〜


〈要旨〉 首都機能を国政の機能性・効率性を損なわない程度に、県境を越えて分散させること「分散型分都」が望ましい。
 
わが国の財政は、行財政改革が進展したとしても、直ちに好転するとは考えにくく、移転コストとその効果の論議は、今後いっそう高まってくる。従って、財政上の理由による新首都着工の延期を契機に、費用対効果の面から、首都機能の形成のあり方−集中型か分散型か−についても検討を加える必要がある。

  本会は、県境を越えて首都機能(国会、省庁の中枢部門、最高裁判所)を分散させること「分散型分都」が望ましいと考える。

 メリットは、既存の多様な社会基盤を活用できること、新たな一極集中を回避できること、危機管理を行いやすいこと、地域の連携と交流を推進できること、多くの地域が投資効果を享受できることなどにある。また、首都機能を受け入れる地域にとっても、自然環境の悪化、交通渋滞の激化、廃棄物の増加、地域コミュニティーの崩壊など、予想される弊害が軽減される。

 デメリットとしては、国政の機能性・効率性を損なうことなどが挙げられるが、分散の範囲を限定することのほか、高度な情報通信機能を整備すること、緊密な連携を要する機関は同一のクラスター内に置くことなどにより、これを緩和させることが可能である。

 移転先地(クラスター)はすべて、既存都市の社会基盤を活用することが可能で、かつ、用地取得費のかからない公有地とする。具体的には、複数ある公有地のなかから、活用できる社会基盤の種類、安全性、造成コストなどを基準に、候補となる公有地をリストアップして、それらをつなぐ方式により首都機能を形成する。

 昨年実施した会員対象のアンケート調査では、首都機能を「特定の地域に集中させる」より「県域を越えた他の地域との連携を図りつつ、分散させる」ことを支持する結果が出ている。

 なお、岐阜東濃地域を含む東海地域(岐阜・静岡・愛知・三重県)は、わが国の中央に位置するとともに、中部新国際空港の着工や国際博覧会の開催を控え、多様な社会基盤が整備されつつあり、「分散型分都」を実現する絶好の圏域である。



2.環境施策・交通施策の基本的な考え方


〈要旨〉 「分散型分都」であることを生かして、移転先地(クラスター)ごとに、独自の施策を立案することが望ましい。


 新首都においては、自然環境の保全、交通渋滞の緩和などが課題となる。コスト面(建設コストだけでなくメンテナンスコストも含む)から考えると、新たな投資を必要最小限度に抑制して、可能なかぎり、施策面からのアプローチで解決を図る必要がある。

 施策を立案するにあたっては、地域の住民、政府、地方公共団体、事業所が一体となって検討することが重要である。さらに、「分散型分都」であることを生かして、移転先地(クラスター)が有する機能や地域の特徴を前面に打ち出し、クラスターごとに独自の施策を立案することが望ましい。

 なお、立案後は、施策の内容や効果を積極的に他の地域へ発信するなど、新首都内のクラスターが、環境保全、交通渋滞緩和の面で、主導的な役割を果たす必要がある。



3.環境施策


<要旨>−「キャピタルクラスター」(国会、一部の省庁)での施策例−
   周辺住民、政府、地方公共団体、事業所が、新首都建設前にクラスター内の適正な緑被率を決定、建設後も定められた緑被率を順守する。


 アンケート調査によると、新首都内の環境を測定する指標を「緑被地の割合」とする回答が最も多い(「緑被地」とは、樹林地、生産緑地、芝生・草地、水面を指す。なお、緑被地は、空気浄化機能、騒音軽減機能、アメニティ機能などを有する)。

■「キャピタルクラスター」(国会、一部の省庁)での施策例

 
 
  • 新首都建設前の段階から、クラスター周辺地域の住民、政府、地方公共団体、立地予定の事業所で、クラスター内の環境保全について協議する機関を設ける。
  • 設立された協議機関は、海外の環境先進都市などの緑被率を参考にするほか、周辺地域との調和に配慮しながら、クラスター内の適正な緑被率を決定する。
  • 新首都を緑被率に適合するように建設する。建設後も定められた緑被率を順守する。従って将来、政府が関連施設を拡充したり、政府の承認を受け事業所が新設される場合、それにより緑被率の低下が生じるときには、政府または事業所は、クラスター内に低下分を補うための緑地などを造成する。
  • 協議機関は、緑被率の低下分の補正状況だけでなく、造成される緑地が周辺の自然環境や生態系と調和しているかについてもチェックする。

 なお、事業所が比較的多いクラスターでは、事業所間で協議して環境負荷の低い技術を導入したり、産業廃棄物の発生の抑制を目指し、環境保全型製品を購入するための具体的目標を定める、また、住宅が比較的多いクラスターでは、「アイドリング・ストップ運動」を展開するなど、クラスターごとに特色ある施策を立案することが望ましい。

 環境保全への取り組みを新首都以外の他の地域に波及させるため、たとえば、地域住民が長い歴史のなかで親しんできた河川を有するクラスターでは、上下流域の住民や地方公共団体、河川環境の保全を目的とするNPOなどに呼びかけ共同で水質を守っていくなど、河川流域の環境を保全するうえで主導的な役割を果たしていく。森林、動植物などを対象に、同様の取り組みを展開することも可能である。



4.交通施策


<要旨> −「キャピタルクラスター」での施策例− 
クラスター内には、消防・救急用自動車など、緊急自動車以外の自動車の乗り入れを禁止、外周部の駐車場に車を置き新交通システムを利用する。


 アンケート調査によると、新首都内のクラスター相互、および、クラスター内を結ぶ交通手段としては、「新交通システムを利用する」とした回答が最も多い。新首都内では、自動車の利用を抑制して、交通渋滞を回避する認識を示した結果であると推測する。
 なお、コスト面から考えると、新交通システムはできるだけ既存の鉄道と連結させる必要がある。

■「キャピタルクラスター」での施策例

  • クラスター内では、消防用・救急用自動車など緊急自動車以外の自動車の乗り入れを禁止する。従って、来訪者はクラスター外周部に設けられた駐車場に車を置き、新交通システムを利用する。国政機関の職務を行う者も同様とする。
  • 周辺の駐車場への交通渋滞を緩和するため、混雑状況や駐車可能台数について、リアルタイムな情報を提供するシステムの整備を図る。車中だけでなく自宅や事業所などの情報通信機器でも検索できるよう充実する。
  • クラスター内の国政機関や事業所に勤務する者は、きめ細かいフレックスタイムや時差出勤を実施する。たとえば、クラスター内の機関と事業所が連携して、自らのフレックスタイムや時差出勤の状況と他の機関や事業所の状況とを比較検討することにより、通勤時間帯を平準化するよう努める。
なお、事業所が比較的多いクラスターでは、エリアごとに共同の荷さばき施設を設けるなど、共同集配のルールを確立する、また、住宅が比較的多いクラスターでは、大型貨物車の乗り入れを規制するなど、環境政策と同様、クラスターごとに特色ある施策を立案することが望ましい。